「いいこのままメルヘン」

冷たくて甘いものが好きだった女の子は
あの街でいちばん頭のいい女の子
遠い街へ全部捨ててあたらしいものだけで
旅に出るには
20万円と
買ったばかりの青いスエードの靴と
どうしようもない言葉が必要だった

夢の中で空をとぶことだけ簡単で
だから東京の空をとぶ夢をみたよ
ただし「くっ」て力いれて「ふっ」だから
低いから空じゃない
電線のむこうにあるのが空だ
いっつもじゃまされる
一回床においてしまったダンボールが重いんだよ

どうしようもないことばっかりの
この街が好きだ
海へはなにか途方もないものが流れ出て
ドラム缶の中で人が死んで
急ぐ帰路には背中を殴られる。

へいきなことだらけ
へいきじゃないことだけがかなうの?

どうしようもないことばっかりの
この街が好きだ。
冷たくて甘いものはどのお店でも買えるし
私がどの色を、どの味を選んだって
誰も見ていなくて
うれしくって
泣いている。

雪がふらない街で何年もくらして
雪がふる街でくらしてたころだって
歩き方なんてしらなかった
同じ真夜中の帰り道ばかりおもいだす
雪がやんで
雪をふむ音だけがした
電話はいつもどおりつながらなくて
やすらいでいた

むかしむかし
トルエンと
むせかえる機械油のにおいのする
小さなまちで
赤ちゃんを産んだことがある
わたしたちはかみのこども
彼女は言った。
アイスコーヒーがちゃんと銀色のやつで出てくる
国分寺の喫茶店で
静かに怒ることのできる人間たちが
とまらないとまらない
煙草の煙のなかで
夢をみている。
しんでるみたいに。

雪がとける
はだで
このまましぬかな
いいこのまましぬかな

2.5次元のからだ
変に甲高い声あげ
まわたで首をしめてあがる

私たちは遠くへ飛ばされようと
たかいところたかいところ
目指してのぼって
大気圏にタッチして
そのまままっさかさまに落ちて
いつか死ぬだろう。

いいこでうまれたからいいこのまましぬんだ
いいこでうまれたからいい
このまましぬんだ

これは幸福な予言だけど
私にはいつだって正しい言葉が出てこない
のどがはりつく感触ばかり
リアルで
切り取られた時間が
風で散らばっていく

ウーマン、イズ、ヘビー、ライクユー
ウーマン、イズ、ヘビー、ライクミー

あの高い声が大好きだった。
オレンジ色のかばんが宝物だった
古本屋でアルバイトしていた。
あのとき髪は長かった。
好きな子には優しくできなかった。
いつだっていらいらしていた。
いいにおいのお香をあつめていた
あのとき本当に髪は長かったのだろうか

さらっていけ
エンドロールよ、残り香だ
パリの灯
ひだひだひだひだ
風が強い
遠くまで
伸ばすのは
腕じゃない
まきつくほど長く
ラプンツェルのかみのけ
あの高い声が好きだった
大好きだった
それだけで生きていけるのに
あるかどうかわからない世界に
私たちが飛んで行ってしまう
さよなら
最後まであなたがわからなくて

「おほしさまがぜんぶかくねちゃったね」ってみくちゃんが言った、
そっか、この子は東京の空にもいつも星を見てたんだな
彼女は東京生まれ、なんだ。
って
メルヘン


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