わたしこのときまだへたくそだったから、また共演したかったです。

ワンダーくんの勘のよさはほんと、すごかった。
説明がいらなかった。さいしょからできてた。練習ほとんどしてない。おかげでふたりとも緊張してけっこうまちがえてる
ワンダーくんがわたしの詩「タイム」をリミックスして、わたしが台詞に振り分けしたんだけど、頭の中で刻んだリズム感まんまが実現されてます。どうやって脳内譜面盗み見たみたいな。
「タイム」という詩はちゅうにすぎて、かまってちゃん過ぎて、みんなをちらっちらっしながらおそるおそる発表した作品だったのですが、ワンダーくんがまっさきに「ともちゃん、いい!」って言ってくれて、彼の評価を信用してたので、わたしのそういう部分を「いたい」だの「さむい」だの気にしないで、出していくべきなのかなあって、きっかけになりました。ていうか、彼にほめられるのはほんとうれしかった。

テキスト、のせます。

「タイム」

「俺たちにできることなんてたかが知れてるんだよ

というのが父の口癖でした
町のはずれの
さびれたタイムマシン工場で

それでも懸命に鉄を打つ父の背中にむかって

「ねぇパパ、飛行機つくってよぉ


とせがむわたしは、今ではもうすっかり大人になりましたが
あまりに多くのことを知り過ぎた今でも

鉄の匂いや、大げさな機械音や、壁に書かれた意味不明の数式、何より父の怒なるような大声は

今でも鮮明に覚えているのです

「飛行機なんてな、時代遅れなんだよ
あんなものもう誰も求めちゃいないんだよ


どうして突然こんな話を持ち出したのかと言いますと
いつもならここで終わる父の言葉に
続きがあったことを近頃急に思い出したからなのです

「まったくな、お前はまだ小さいからわからないかもしれないがな
空なんてな、飛行機なんかなくてもな、簡単に飛べるんだぞ


それでは聴いてください
「タイム」

本当のことなんて一つも言わなくて良いから女が一人いればいいのか
俺にとってのビッグニュースは君にとっての暇つぶしにすぎないのか
死んでからじゃ遅いのか
生きてるうちにやんなきゃいけないことなのか 
髪を伸ばして髭でも生やしてテクノかハウスのDJでも始めたらいいのか
真理の発表なんか誰も待っていない
待ってるのはあの子からのメールの返信だ
そう思うとやるせなくなって帰り道がわからなくなる
世界はもう、とっくにシャッターをおろしている

めいわくはかけちゃいけないってわかってます
けれど家の帰り方わかんなくなっちゃったから
迎えに来てほしいです
君の家からそんなに遠くないはずです
だから迎えに来てほしいです
そして手をつないで高く高くとんで帰れるかな
何時間かかったっていい
君とだったらほんとにできるかもしれない

僕はまた迷ってしまう
終わらないミックスCDを聴きながら
何度乗り継いでも君のいる駅にはたどり着けない
いいじゃんねぇなにもかも
諦めることは得意なんだ
昔から
心配されたいだけなんだ
きっと
調子出なくてさ
最近
ううん大丈夫、ありがとう
でも、できれば声が聞きたいな

だいじょうぶじゃなくても
生きてればだれも気づかないよ
死んじゃえば多少気づかれるかも
助かりたかったら少々大袈裟ぐらいがちょうどいい
空を飛ぶ方法をやっと見つけたよ(空を飛ぶ方法をやっと見つけたよ)
夢の中だけじゃなくて(夢の中だけじゃなくて)

くって力いれるとふってとぶ
くって力いれるとふってとぶ

手をつなぐともっと高くとべる
だったらそうやって家に帰る
何時間かかったっていい
そうやって家に帰る

僕はふと人間が生まれた日のことを思い出してみる
夕焼けだった
そう、太陽が空を焼き尽くしていた
何もない海と荒野だけの世界に
壊れたタイムマシーンがぽつんとあって
The fuel is empty. (燃料を入れてください)
The fuel is empty. (燃料を入れてください)
と繰り返すその小さな機械に腰かけ
途方に暮れる
君は今どこにいるんだろうか

今、黒猫の背中にいます
電話でいいから誰かとつながりたい
家の帰り方わかんなくなっちゃった
201号室、201号室
雨のあとのアスファルトは黒猫の背中
誰も死ななくて済むかな
踊りたい
友だちに会いたい
旅に出たい
旅に出た友だちと合流したい
家の帰り方、わかんなくなっちゃった
201号室
201号室!

と僕は思わず立ち上がり声に出してみた
誰もいない世界において声は
とても不思議なものになる
ふと見上げると神様が夕焼け空をちぎって人間をつくっている
201号室、と僕はまたつぶやく

かなしくて仕方ないんだ
カラオケの映像
雑踏の中でわたしだけ止まってて
眉毛が太い
目が白黒
ひとりぼっちだ

かなしくて仕方ないんだ
旅に出たのは良いけれど
僕以外に人間は一人もいないんだ
夕焼けは綺麗だけど
それを伝える相手がいない
ひとりぼっちだ

でもそのときだ
くやしくてくやしくてこぶしに力を入れたら
体がふっと浮いたんだ

空を飛ぶ方法を見つけたよ
夢の中だけじゃなくて

くって力いれるとふってとぶ
くって力いれるとふってとぶ

手をつなぐともっと高くとべる

だから僕(わたし)は

君の小指を捕まえて
もう絶対に離さない
何時間かかったっていい
そうやって家に帰る
わざと遠回りしたっていい
そうやって家に帰る


だからそうやって家に帰る
そうやって家に帰る

ねぇ、空を飛ぶ方法を、見つけたよ




ありがとうございました。