不可思議/wonderboyくんに初めて会ったのはモリマサ公が西荻窪で開いたイベントでのオープンマイクだった。猫道くんとも三角みづ紀さんとも初対面だった。
猫道くんの紹介でワンダーくんからメールがきて、
コンピレーションアルバム「言葉がなければ可能性はない」に参加することになった。
 
レコーディングは2009年6月。ワンダーくんの実家で行うことになり、当日は1時間くらい西武新宿線に乗って、茶畑の街に向かった。くもっていた。
降りたらワンダーくんがにこにこ笑って立っていて、ちゃんと話すのはじめてなのにぜんぜん緊張しなかった。横断歩道がなくて、車の人に手で合図して車を止めて、道路を渡った。

ワンダーくんの部屋に入ったら、村上春樹がたくさんあった。
わたしは当時録音環境がなくて、こんな機会めったにないので4曲録ってもらってそこからワンダーくんに収録曲を選んでもらうことにした。だいたい一発録りだったのでそんなにかからなかった。
「世界征服やめた」のデモを聴かせてもらった。
終わってダイニングテーブルで、美味しいサンドイッチをごちそうになった。
ワンダーくんには「ねこ」と呼ばれていて、ご家族には「チロル」と呼ばれているねこがかわいかった。
042
043
トイレには日本地図が貼ってあった。家族写真がたくさん飾ってあった。帰り、駅まで送ってくれて、一人暮らしがしたいんですよーーーとか話してた。

猫道くんのイベントで、サラリーマンのスーツを着たワンダーくんが、カウンターの一番奥でビールを飲んでいた。

「満足せよ」という主に詩人がふたりでコラボするイベントを当時、守山ダダマさんが主催していて、ワンダーくんと共演することになった。きっかけはワンダーくんに「銀河鉄道の夜」をとても好きだと伝えて、ともちゃんに女の子のパートをリーディングしてもらいたいなんて話をミクシィでしていたこと。それをダダマさんに伝えていたことだ。
そして、わたしが「タイム」という詩を中二と言われることを(9さいだが…)おそれながらミクシィに投稿したら、ワンダーくんが真っ先に褒めてくれたことだ。
001
実家も201号室だしね、と言っていた。

初めての打ち合わせのときはワンダーくんが書き溜めた大学ノートを渡され、ともちゃんにそのままあげてもいいとか言われて、そんな大切なもの自分で持ってて的なやりとりをした記憶が…

ダサいラップのわたしパートのリリックはワンダーくんがわたしの道産子ぶりをリサーチして書いてくれたもの。
「先生、あのね」はわたしが最初リミックスしたものがあまりにも短くて、ワンダーくんがふくらまして、わたしが読む振り分けをしたもの。
「タイム」はワンダーくんがリミックスした短編小説みたいに仕上げてくれたものをわたしが読む振り分けをしてリズムを出したもの。
「銀河鉄道の夜」はわたしもラップを練習していたがそれがいまいち笑だったのもあり、ポエトリーリーディングになった。わたしがリーディングしているところで流れているピアノの曲は新宿でスタジオに入ったあと、二人でタワレコに寄ってワンダーくんが買った「空気人形」のサントラ。

ワンダーくんは緊張?とかに弱くて、前日めちゃくちゃ体調を崩して、出られないかもという連絡がきて、一人で出演する覚悟もしていたんだけど、当日ちゃんと二人でスタジオに入って万全に臨むことができた。
ライブは当時、ポエトリーリーディングでのライブがちょっと怖くて(音楽ユニットでソプラノリコーダーを吹いたりはしていた)ライブほとんどしてなかったわたしの固定観念が吹っ飛ぶくらい、演劇をやっていたあの舞台が発光する瞬間を思い出すくらい、楽しかった。

模索舎でのイシダユーリちゃんとのライブがものすごくすばらしく、終わったあとワンダーくんもユーリちゃんも帰ったのに、初対面に近いみなさんとカラオケに行った。
だいすきな「ハナミズキ」を歌ったらとても褒めてくれた人、たぶん藤本九六介さんなんだけど、ご本人に確認していないなそういえば。


3.11が起こった。

さいごにワンダーくんに会ったのはベンズカフェで、わたしが眉毛の整え方に悩みすぎてへんな形にしてたら「どうしたの?!」と言われた。
そのとき6月24日のグレープフルーツムーンでのライブに、ぬくみりゑちゃんとのコンビ「腐乱ちゃんと恨乱ちゃん」

で出ないかとふんわり誘ってもらったけど、恨乱ちゃんことぬくみりゑちゃんが子を授かったばかりで安定期に入る前だったのでおことわりした。


さいごのやりとりはメールだった。 
『ともちゃん、新曲で、ともちゃんの「手の中の液晶を信じて」 ってフレーズを使わせて欲しいんだけどいいかな?(>_<)』
って来て 
『いいよー てか光栄ですばい』 
って返した。



汗だくのまま、夏の喪服の試着をした。西武新宿線に乗った。ぬくみちゃんと途中の駅で合流した。
お通夜は妹さんの提案でずっとワンダーくんのMVとライブ映像がずっと流れていて、さいごに、顔をみるのを待っているとき「ポエトリーリーディングは鳴り止まないっ」が流れて言葉が濁流みたいで頭の中ぎゅうぎゅうになってそれからずっとおかしいんじゃないかってくらい泣いた。
ぬくみちゃんとずっと黙って寿司を食べた。

今回アルバム出るの真っ先に本気で喜んで、めっちゃ聴き込んでくれる人。
亡くなってしまうとおしゃべりができないことだけ、かなしい。
けどつながってる感じはずっとしてるんだよなあ。